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初心者でもすぐ楽しめる!
SPORTS / INTERVIEW
プロ選手・嶋晴菜さんと
FITOKIO代表・吉村大作さんが語る、その魅力
テニスよりもコンパクトなコートで、穴の開いたプラスチック製のボールを「パドル」と呼ばれるラケットで打ち合うピックルボール。
米国で生まれたこのスポーツは、近年マレーシアでもコートや大会が増え、年齢や性別、運動経験を問わず楽しめるスポーツとして広がりを見せている。
9月3日、FITOKIO代表の吉村大作さんは、UPA Asiaとプロ契約を結び、アジアを中心に国際大会を転戦するピックルボール選手嶋晴菜さんをFITOKIOに招いた。
競技との出会いから、ピックルボールならではの奥深さ、日本とマレーシアの競技環境、そしてスポーツが人とのつながりや人生にもたらす変化まで。
競技者と指導者、それぞれの視点からピックルボールの魅力を語り合った。
嶋さんがピックルボールを知ったのは、フィットネス関連企業に勤務していた時だった。同社がピックルボールに関する新規事業を検討し始め、硬式テニスの経験があった嶋さんにも声がかかった。初めて映像を見た時の印象は、「少し遊びっぽく、簡単そう」。ところが、実際にパドルを握ってみると、その印象は一変した。
「単純に楽しくて、何もスポーツをしていなかった自分の次の趣味になるかもしれないと思いました。初日から、もっとやりたいという気持ちになりました」
その後、サークルで週1~2回プレーするようになると、「もっと上手になれる」という思いが次第に強くなっていった。
転機となったのが、台湾で開催されたアジアの大会だった。日本から選ばれていた選手の一人が欠場することになり、嶋さんに出場のチャンスが巡ってきた。競技を始めて間もない中での初めての海外大会。それでも結果はベスト8だった。そこで感じた悔しさと同時に、「もっとできる」という確かな手応えが残った。その経験が、趣味として楽しんでいたピックルボールから、本格的に競技の世界へ進む大きな転機になったという。

ピックルボールならではの面白さについて、嶋さんが真っ先に挙げたのが「駆け引き」だ。
「ピックルボールでは駆け引きが大切です。そこからチャンスが来たら速いボールを打ったり、相手を動かしたりする。体力や体格、パワーだけが、そのまま結果に直結する競技ではありません」
ネット際では、「ディンク」と呼ばれる緩やかなショットなどを使いながら相手の動きを読み、攻撃へ転じるチャンスを探っていく。手先の器用さや繊細なパドル操作も重要になるため、単純なパワー勝負ではない。女性や子ども、年齢を重ねたプレーヤーでも、それぞれの強みを生かしやすいのが特徴だ。
コートはテニスより小さく、初心者でも比較的ラリーを続けやすい。一方で、競技レベルが上がれば、ショットの選択、ポジショニング、相手との読み合いなど、求められる技術は一気に深くなる。「始めやすいのに、突き詰めるほど奥が深い」。そこにピックルボールならではの面白さがある。
嶋さん自身の武器は、安定したディンクと、自身の身体的な強みを生かした攻撃力だ。
「ゆっくりゲームを組み立てることもできますし、アグレッシブに攻めることもできます」
状況に応じてプレースタイルを変えられる柔軟性も、世界を舞台に戦う上での強みとなっている。
PROFILE

京都府京都市出身、30歳。学生時代に硬式テニスを経験し、フィットネス関連企業への勤務をきっかけにピックルボールを始める。台湾で開催されたアジアの大会への出場を機に、本格的に競技の道へ。2026年はUPA Asiaの「Rising Star」に選出され、1年間のUPA Asia Pro Contractを締結。PPA Tour Asiaをはじめ、アジアを中心に国内外の大会へ参戦している。また、日本全国47都道府県のピックルボールサークルを訪ねる活動にも取り組み、これまでに約20都道府県を訪れている。
現在、アジアを中心に大会を転戦する嶋さんだが、遠征は決して華やかなことばかりではない。特定のチームを作らず活動してきたため、航空券や宿泊先の予約、大会日程の管理、安全面の確認、練習相手やダブルスのパートナー探しまで、基本的に自分自身で行ってきた。
「私は英語も流暢ではなくて、ピックルボールを始めてから勉強するようになったので、最初はコミュニケーションにも苦労しました」
それでも各国の大会を回り続けるうちに、海外の選手とのつながりが増え、練習相手や現地で支えてくれる人も少しずつ増えていった。今では、「助けてくれる人がいるなら頼ってみよう」と考えられるようになり、遠征先にいる日本人にも自ら「会いたい」と声をかけるという。ピックルボールがつないだ縁は、競技の枠を越えて広がっている。その思いは、日本国内で続けている「47都道府県のピックルボールサークルを訪ねる活動」にも通じる。各地でピックルボールを楽しむ人々に直接会い、地域のコミュニティに触れる。そこでは、競技が単なる運動ではなく、生活のリズムや人との交流、生きがいの一つになっている姿を見ることができるという。
一方の吉村さんも、実際にプレーしたことでピックルボールに引き込まれた一人だ。もともとサッカーとテニスの経験があり、最初からある程度ボールを打つことはできた。しかし、ディンクやドロップなどの技術を学んでいくうちに、テニスとはまったく異なる競技の奥深さを感じるようになったという。
マレーシアでは数年前から専用コートが増え、ローカルの間では急速に普及が進んできた。一方で、在住日本人にその情報が届くまでには少し時間差があった。そこで吉村さんはコーチ資格を取得。初心者や、英語でのレッスンに不安を感じる日本人に向けた指導を始めた。
「ダイエットをしなさい、運動をしなさいと言われても、なかなか続かないですよね。ピックルボールは、楽しみながら健康になるための素晴らしいツールだと思っています」
FITOKIOで指導する人の中には、それまでほとんど運動経験がなかった主婦や、長年子育てを中心に生活してきた人もいる。最初はボールを打つだけだった人が、練習を重ねるうちに少しずつ上達する。そしてマレーシアでは初心者向けの大会も数多く開催されているため、「次は大会に出てみたい」という新しい目標が生まれる。中には、週に何度もコートへ足を運ぶようになった人もいるという。
「今まで身近な目標が明確でなかった人が、大会に向かって努力するようになる。『ピックルボールのおかげで人生が変わった』という話を聞くのが、本当にうれしいですね」
単なる運動習慣にとどまらず、新しい仲間や目標、生きがいにつながっていく。それこそが、吉村さんが感じているピックルボールの大きな可能性だ。また、一つのコートで複数人がプレーでき、世代や性別を越えて一緒に楽しめることも、競技が急速に広がっている理由の一つだと話す。
PROFILE

FITOKIO代表/APBA協会認定ピックルボールコーチ。マレーシアで健康・フィットネス関連事業を展開する傍ら、ピックルボールのコーチ資格を取得。在住日本人を中心に、初心者向けレッスンや交流会を開催し、マレーシアでのピックルボール普及にも取り組んでいる。
日本でも、この1年ほどでピックルボールのサークルは急速に増えている。学校や公共体育館などを利用して楽しめる環境が広がる一方、世界の大会で一般的に使用されるハードコートとはボールの跳ね方などが異なる。また、専用コートの数や利用料金、アクセスといった面では、まだ課題も残る。
一方、マレーシアやベトナムでは、レベル別、年齢別などさまざまなカテゴリーの大会が頻繁に開催されており、競技を始めたばかりの人でも「大会に出る」という目標を持ちやすい。特にベトナムは競技人口、選手層ともに厚く、練習環境も充実しているため、嶋さん自身も海外遠征時の拠点の一つとしている。
そして現在、嶋さんが目指しているのは、アジアの上位ツアー大会でメダルを獲得すること。大会で結果を残し、ポイントを積み重ねながら、さらに世界のトップレベルへ近づいていくことを目標に掲げている。
最後に、MTown読者へメッセージをもらった。
嶋晴菜さん
「誰でも気軽に始められて、気づいたら生きがいやライフスタイルの変化につながっているのがピックルボールです。心身の健康だけでなく、誰かとつながるためのツールにもなると思います。まずは一度やってみて、その魅力を体感してほしいです」
競技者として世界を目指す一方、自ら全国のコミュニティを訪ね歩く嶋さん。その言葉からは、勝敗だけではないピックルボールの可能性を多くの人へ伝えたいという思いが伝わってくる。
吉村さんも、これから始める人にこう呼びかける。
吉村大作さん
「ボールを打つだけでも楽しいですが、ある程度上手になれば、いろいろな人と一緒にプレーできるようになります。最初の基礎が大切なので、きちんと習いたい方はぜひレッスンに来てください」
FITOKIOでは初心者向けレッスンのほか、毎週月曜日の午前11時から午後1時まで、「ピックルボールの会」として初心者から経験者まで参加できる交流会を開催している。
運動経験がなくてもいい。年齢を理由に諦める必要もない。健康のために始めてもいい。新しい仲間と出会うためでも、夢中になれる目標を見つけるためでもいい。まずは一度パドルを握り、コートに立ってみてはいかがだろうか。

by TOKYO ATHLETIC CLUB
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