弓木英梨乃(ゆみき・えりの)さん
KIRINJIのメンバーとしてギター・ボーカルを担当。秦基博、土岐麻子、柴咲コウなど日本を代表するアーティストのサポートギタリストとしても活躍。ステージでは明るく印象的な笑顔と卓越したギターテクニックで観る人を魅了する。
海外の音楽を広く学びたいとの思いから当地の音楽大学へ留学するため、2021年に来マ。2023年3月に本帰国。
弓木英梨乃さんは、日本で活躍するプロのミュージシャン。
3月に独立行政法人 国際交流基金クアラルンプール日本文化センター(The Japan Foundation, Kuala Lumpur:JFKL)主催で開催された日・ASEAN50周年記念ライブ「Erino Yumiki x Nadir Special Concert」では、当地のジャズバンドNadirと共演し圧巻のステージを披露しました。
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2021年に音楽留学のために来マして以来、マレーシアが大好きになったという弓木さんに、帰国前に
マレーシアでの生活や音楽のこと、今後についてお話を伺いました。
音楽家の情熱は日本もマレーシアも同じ
ー先日のライブはお疲れ様でした。会場も満員で大好評でしたね
ありがとうございます。あんなに沢山の人が観に来てくれると思っていなかったので嬉しいです。無事に終えることができてまずはホッとしています。
ー弓木さんとNadirのみなさん、息がぴったりの演奏でしたよ
本当ですか! これは日本でもそうですが、ライブを一緒にやると一気に絆ができるなと思って。今回、JFKLからのお声がけでNadirと共演させていただきましたが、私もメンバーのことがどんどん好きになったし、こんな経験は人生で何度もできるものではないので感無量ですね。
ー日本で活躍の弓木さんですが、マレーシアのミュージシャンと共演する上で違いはありましたか
逆に、これは驚いたことの1つなんですけど…
「あ、同じなんだな」と感じたのが大きいです。
共演する前は、日本でライブをする時ともっと違うのかなと思っていました。
でも実際は、ミュージシャンとしての考え方や生活の仕方、ステージに向けて作り上げていく姿勢や情熱も一緒なんだなと。
リハーサルでも、1人ひとりがプロフェッショナルなミュージシャンというか、回を重ねるごとにどんどん曲が完成していくのがとても楽しくて、なんだか感動しちゃいました。
ーまさに「音楽は国境を超える」んですね
はい、自分で言うのはちょっと気恥ずかしいですけど…その通りだと思います!
アジア音楽の魅力は情緒的なメロディ
ー弓木さんはもともと音楽留学で来られたそうですね。何かきっかけはありましたか
私は19歳からずっと仕事として音楽をやってきましたが、学校でアカデミックに学んだことがなかったんです。それがずっとコンプレックスで…。
そんなときにパンデミックが起きたり、私が所属していたKIRINJIの解散もあって、少し時間ができたんです。年齢も30歳の節目を迎え、これから先もずっと音楽を続けていきたいし勉強もしたいなという気持ちで留学を決めました。
ー音楽というとアメリカや西欧のイメージですが、なぜマレーシアに?
確かにはじめは欧米圏の大学を探していたんですが、もともとアジアのポップミュージックに興味があり、インディーズのバンドやポップスを聴いていたんです。
欧米の音楽に比べると、日本も含めアジアの音楽はメロディーがとても印象的だと思います。
例えば歌謡曲のように、
メランコリックだったりメロディアスだったりする音楽を好む感覚がアジアの人には根付いてる気がするんですね。
今回ライブでNadirと一緒に演奏した*「Hijau」もメロディが綺麗でとても心に響く曲でした。
*Hijau…マレーシア国民は皆歌えるという、1990年代のポップス曲
ー確かにアジアの音楽にはいい意味で“湿度”というか、情緒的な雰囲気がある気がします
それに、日本に住んでいると他民族国家ってあまり想像できないですけど、そういった国としての魅力に惹かれたのも大きいです。
行ってどうなるかわからないけど、チャレンジしてみたいな。マレーシアで勉強して生活した後に自分がどう変わるのかとても興味があったんです。
なので、誰にも相談せずに勢いで「えい!」って来ちゃいました!
ー思い切りがありますね!
この人と話したいという思いから英語は伸びる
ー入試や授業は英語だと思いますが、もともと話せましたか? ライブのMCも流暢な英語でしたね
全然流暢じゃないですよ~! 留学のために日本でIELTSの勉強はしていましたが、話すことが苦手で…。
ライブの時も事前に暗記して頑張って話してたんです(笑)。
大学に行っていろんな人と過ごすうちに英語も伸びると期待していたんですけど、…実はマレーシアに入国した日にロックダウンになってしまって。
ずっと自宅で過ごして授業もオンラインで受けていました。
ーえ!せっかく留学に来たのに、コロナで自粛生活に…
そうなんです(泣)。でも、今回Nadirとライブをさせていただいた1か月ほどで一気に英語が伸びたなと感じています。
語学で一番大事なのは、この人と話したい、コミュニケーションをとりたい、という気持ちなんだと思いました。
最近ではNadirのみんなにマレー料理のレストランやバードパークにも連れて行ってもらいました!
マレーシアは肩の力を抜ける場所
ーでは出会いも色々あって、日本に帰るのは少し寂しいですね…
そうですね…。私、日本にいたときは音楽=仕事という感覚が強かったですし、何でもきちんとしなきゃ、と思っていたんですね。
でもマレーシアにいる時はだらだらリラックスしていても誰も怒らないし、気づいたら1日が終わっていたり。
でも「これはこれでいい1日だったな」と思えるというか。
自粛中も好きな曲だけ思う存分ギターを練習したり、マレーシアで過ごすなかで人生ってもっと自由だし気楽でいいんだなと思えたことが、ミュージシャンとしても人間としても、
これからの自分の人生の基盤になる時間だったなと感じています。
なので、機会を見つけてぜひまたマレーシアに戻ってきたいです。
ーマレーシアで弓木さんのライブをまた観たいです
ライブいいですね!
私も、Nadirのみんなとはもちろん、これからは海外の方と積極的にコラボレーションしていきたいと考えています。
今はSNSがあるのでそういうことが以前より簡単になってきていると思います。
ー新たな夢に向け、とても生き生きしていて素敵です。最後にMTownの読者にメッセージをお願いします
私の偏見ですけど、就職や留学でマレーシアを選ぶ方ってそれぞれにストーリーを持っていたり、とてもユニークな方が多い気がするんですね。
マレーシアはとても複雑ですべてを理解するのは難しい国かもしれませんが、だからこそ色々なことを考えて過ごせる国だと思うので、マレーシアにいる今この瞬間を楽しんでほしいです。
一緒に頑張りましょう!
一つ一つ丁寧に言葉を選びながらインタビューに応えてくれた弓木さん。
有名なプロのミュージシャンでありながら、謙虚で、いつまでも学ぶ姿勢を忘れない素敵な方でした。
またマレーシアでライブを観られる日を楽しみにしています。ありがとうございました!
関連情報
弓木英梨乃 Youtubeチャンネル
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国際交流基金 クアラルンプール日本文化センター
The Japan Foundation, Kuala Lumpur: JFKL
https://www.jfkl.org.my/