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さる5月、日本経済新聞の紙面に「ダイドードリンコから派生したマレーシア企業のザ・ヴィダ・ワールド(The VIDA World)が炭酸飲料「VIDA(ヴィダ)」を日本に投入する」というニュースが掲載されました。近く、日本の店頭にも商品が並ぶ運びです。どんな経緯で現在の形となったのでしょうか。ダイドーのマレーシア法人開設以来、VIDA商品の拡販に努力されているザ・ヴィダ・ワールドの須磨 剛マネージング ダイレクターにお話を伺いました。
現在、日本のダイドーグループとは資本関係は御座いません。日本の皆さんに親しまれているダイドードリンコ(DyDo Drinco)のマレーシア現地法人は2016年、地場の大手菓子メーカーとの合弁で生まれました。しかし、経営方針の違いから、2019年10月にダイドー独資に切り替わりました。
2020年は、合弁時代の”負の遺産”を一掃し、前年比2.5倍近くと過去最高の売り上げに達し、従業員のモチベーションが上がってきた矢先に新型コロナが直撃。全社の海外事業見直しにより会社清算が検討されましたが、将来の可能性に期待いただける投資家にM&A頂く方が良いと考え、本社との間で株式売却に向けて協議しました。
その結果、シンガポールの投資会社の支援も得て、株式譲渡を受け、新たな一歩を踏み出しました。
マレーシアの飲料市場は50億リンギ規模と言われていますが、日本は1,500億リンギ相当と試算しており、非常に大きい市場です。ですから「伸び代が大きい日本市場で挑戦しない理由はない」と思いました。さらに、母国である日本に対しては特別な思い入れがあり、マレーシア生まれのブランドが先進国で受け入れられることを目指しています。
VIDAブランドの”味”の選定については、日本での販売先である神戸物産が展開する業務スーパー様と協議して選定頂きました。最終的には、新鮮さと日本人に受け入れやすい味であること、ゼロカロリー飲料市場で新しいバリエーションを提供できるということで「ソルティーライチ」「グリーンアップル」「サクラ」が選定されたと伺っています。
日本での販売については先述の通り業務スーパー様での取り扱いが決定しています。今後も他の流通チャネルを検討中で、首都圏の大手スーパー向けに、年内に展開できるよう推進しています。
VIDAブランドの”糖質ゼロ”は健康志向が高まる中で、日本市場でも受け入れて頂ける可能性が高いと感じています。一方で、ハラル認証については、日本ではまだ認知度が低いですが、イスラム教徒(ムスリム)向けの需要があると考えています。
コロナ禍のさなかには、ロックダウンによる生産量不足が原因で営業活動を限定的にせざるを得ず、販売が伸び悩みました。ロックダウンが明けてからは生産量が確保され、営業活動も再開できたことで販売は急成長しました。
VIDAブランドは2019年から販売していましたが、2020年のブランドリニューアルに伴い、分かりやすいブランドマークを採用し、白いマット調の缶、そして日本語を使った商品名やキャッチフレーズ「純粋に、人生を楽しもう」を掲げるなど、市場である程度目を引く存在になったことも、売上増加の一因と考えています。リニューアルの際には、缶メーカーや工場を変更する必要があった等、苦労もありましたが努力した甲斐があったと感じています。
今後は、マレーシアを含む輸出先各国での販売本数を更に増やしていくとともに、日本国内では年間500万本の販売目標に向けて、市場に応じた柔軟な戦略を採用し、商品ラインナップの拡充と新しい市場の開拓を進めていく予定です。
日本の市場は非常に巨大であり、流通システムが整っています。このシステムに対応できるかが大きな課題になると考えています。他の市場と比べて、日本市場にはそうした点で特有の難しさがあります。
新商品の展開については、基本的には自分たちが飲みたいと思うものを企画・販売する方針を続けていくつもりです。
この会社を経営する長期的な目標の一つに「マレーシアの対外的・相対的なポジションを上げる」ことがあります。戦後、日本の製品が欧米で受け入れられなかった時代を、昭和の名経営者や各企業の方々が突破し、現在の日本があります。今後、マレーシアも先進国で受け入れられるブランドを確立していく必要があると考えております。
日本は、マレーシアのみならず多くの国で一目置かれる存在です。それは、私たちの世代ではなく、先代や先々代の血の滲むような努力の賜物だと考えています。マレーシアが同様に他国から一目置かれる存在になれたらと思い、その一端を担うことができれば望外の喜びです。