日系企業の景況感が悪化、JACTIM-JETROの調査で判明
2023.04.08 日系企業動向マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)と日本貿易振興機構(JETRO)クアラルンプール事務所は4月6日、「2023年度JACTIM-JETRO共同日系企業アンケート調査」の結果について、報道機関向け説明会を実施した。
コロナ禍からの立ち直りにより、各企業の景況感が大幅に改善するとの予測から「業況判断」は大きくプラスとなるとの見通しが掲げられていた。
ところが調査の結果、「昨年より悪化」との見方を示す企業が多く、予測に反してマイナスに転じている。
「景気動向調査」は、JACTIM会員企業556社に、2023年1月20日~2月27日にかけて、足元の景気動向を中心に質問した内容について集計している。
有効回答数は198社、全体の回答率は35.6%となっている。
各項目に関する調査結果概要は次のとおり。
「業況判断DI(Diffusion Index=景気動向指数の略)」について
マイナス8.1ポイントと前期から17.5ポイント悪化。前回の予測値+20.5ポイントから大幅なマイナス乖離が発生した。
企業がリセッションなどへの警戒により2期ぶりにマイナスに転じた。
来期についてはマイナス15.2ポイントとさらなる悪化を予測している。
「現在の操業状況」について
製造業では回復ペースに鈍化傾向がみられる。
コロナ禍前と比較した生産状況は、非製造業においては、コロナ禍前の水準以上と回答した企業が8割弱に達する一方、製造業においては、コロナ前の稼働状況に満たない企業が約4割を数える。
これは従業員の賃金上昇、物価上昇や為替レートの変化等を問題視しているものとみられる。
また、「駐在員の就労」については、雇用パスの取得の困難さが引き続き課題とされる。
「米中間技術覇権争い」がある中で、約6割の企業が情報管理を強化しているとの回答が得られた。
「マレーシアの投資環境」について
「労働者・国民の英語力」「親日的」「良好な生活環境」 などが中長期的な投資環境上の魅力と感じている企業が半数ほどに達している。
一方、「貿易・投資上の課題」としては、「一般ワーカー不足」「頻繁な規制変動」「高度人材の確保難」などが挙げられている。
「今後の展開」については、製造業・非製造業ともに約5割が「現状維持」、約2割が「純粋増設、新規ビジネス開発など」の拡張を検討している。
なお、「撤退を検討」との回答はなかった。
「脱炭素の取り組み」については、4割超の企業が取り組みを推進
「取り組み予定」を加えると7割以上に達する。
「省エネ・省資源化」や「再エネ・新エネ電力の調達」に取り組む企業が多い。
一方、課題としては「費用対効果が不明、または見込めない」が最多で、「政府の脱炭素関連施策が具体化していない」が続く。
「機械化・自動化・デジタル化」について
機械化等の設備・技術を「導入済み」または「導入予定」とする回答は37.4%で、前回調査から約10ポイント上昇した。
賃金上昇や労働力不足への対応として、検品装置などの自動化や、生産効率化としてデータ分析に企業は取り組んでいる。
「外国人労働者の採用状況」について
2022年2月以降、製造業企業の過半数が外国人労働者の採用申請を実施。
その9割で承認が得られている。
製造業企業の半数が“80:20ルール”の対象となっているが、3割の企業が2024年末までの比率達成は困難と回答しており、きめ細やかな政策対応が望まれる。
「税金還付、税務調査」について
移転価格税制に関する調査が入った企業は、前回調査と比べ製造業で微減、非製造業で大幅減。税金還付が遅いとの回答は、非製造業で増加している。
「政府への要望」について
政府の発表内容に関し、余裕を持った発表、事前の運用の確実な整備、英語での発表を求める声が大きい。
エネルギーコスト、特に電気料金の見直しを求める声が多い。
産業底上げのために競争力を高めてほしいと要請もある。
政府に期待するインセンティブとして、中小企業向けの各種優遇措置を外資にも適用して欲しいとの回答が最多だった。