日本貿易振興機構(JETRO)クアラルンプール事務所は2月16日、「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」のうち、マレーシアに関する結果を分析したサマリーを公表した。
これは、JETROがアジア・オセアニア20カ国・地域 に進出する日系企業活動実態を把握し、その結果を広く提供することを目的とした「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査(2020年12月23日公表)」を元にしたものとなっている。
調査は、オンラインにて配布・回収、2020年8月24日~9月25日にASEANを含む、北東アジア、南西アジア、オセアニア諸国に進出している日系企業に対して実施した。うち、マレーシアについては946社に問いかけ、257社から有効回答を得た。
分析結果は以下の通りとなっている。
【アジア・オセアニア進出日系企業実態調査、マレーシアに関する主要ポイント】
1. 営業利益見込みは減退
・2020 年の営業利益見込みにおける黒字比率の ASEAN 平均は 43.9%、赤字比率は 37.1%だった。前年(2019 年度)調査ではそれぞれ 64.2%、17.1%であったため、 各国とも営業利益の大幅な悪化となった。
・在マレーシア日系企業の営業利益見込みの黒字比率は 50.0%で、ASEAN 平均を上回った。
2. 資金繰り悪化はインドネシア、マレーシアでやや顕著。
・新型コロナウイルスの影響により、「資金繰りが悪化した」という企業はインドネ
シア、マレーシアで特に多く、中でも、「取引先からの入金遅延」が課題となって
いる。
3. マレーシアでは36.1%が拡大意欲、「食料品」「精密・医療機器」「運輸」が堅調
・今後1~2年の事業展開の方向性では、ASEAN各国とも「拡大」を選択した比率は、 前回調査に比べ10~20 ポイント下がった。
・在マレーシア日系企業は36.1%が「拡大」意欲、前回比下がり幅はASEAN6ヵ国で 最も小さかった(6.7 ポイント減)。特に、拡大する機能では「生産(高付加価値品)」が 44.4%と ASEAN6ヵ国で最も高く、製造業では食料品、精密・医療機器、 非製造業では運輸業が 6割を上回り、拡大意欲が高い結果となった。
4. ASEANにおける新型コロナウイルス後のビジネス正常化時期は「2021年後半」が大勢 ・新型コロナウイルス後のビジネスの正常化時期については、ASEAN6ヵ国とも「2021 年後半」を見込む企業の比率が最も高かった。各国で、約半数の企業が新型コロナウイルスの影響によって事業戦略等の見直しを行うとしており、サプライチェーンの見直し、デジタル技術の導入などが目立った。
5. 従来の労務課題に加え、新型コロナウイルスによる販売への影響が経営課題の上位に
経営上の問題点として、従来から上位に上がる「従業員の賃金上昇」、「原材料・部 品の現地調達の厳しさ」、「限界に近付きつつあるコスト削減」のほか、「取引先からの発注量の減少」「主要販売市場の低迷(消費低迷) 」、「新規顧客の開拓が進まない」などの項目が上位に挙がっており、新型コロナウイルスの影響による影響とみられる。
・マレーシアでは、特に「従業員の質」を問題視する企業の割合が他のASEAN諸国に
比べ最多だった。
6. デジタル技術導入には、人材・コストの課題が山積みか
・新型コロナウイルスの影響も後押しして、デジタル技術の導入を検討する企業は、 ASEAN6ヵ国ともに約半数程度となっている。人材やコスト面に課題を抱える企業の比率は各国とも総じて高いが、特にマレーシアでは人材やコストへの課題を感じている企業が多い傾向がみられた。
※全体の調査結果:
「2020年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)(2020年12月)」
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2020/01/b5dea9948c30e474.html