
【週末の読み物】シンガポール、欧米からの渡航受け入れへ=日本とマレーシアは適応外-2021/10/10
シンガポールが、新型コロナウイルス対策ワクチンの接種者を対象にした「隔離なしの入国」を認める「ワクチントラベルレーン(VTL)」の対象となる国を欧米を含む11カ国まで拡大した。これまで、ドイツとブルネイに認めていたが、これを韓国のほか、英国やフランスなど欧州主要国に広げた。
VTLには細かな条件はあるものの、ビザなし短期滞在も認める格好となっており、対象となった国のビジネスパーソンにとって、シンガポールへの渡航が一気に簡単となる。
基本的なルールは、「ワクチンの接種を終えていること」に加え、「指定された航空会社の直行便でシンガポールとの間を往復すること」「シンガポールへの出発前、および到着後(2回)にPCRを受ける」といった格好になっている。また事前の届出も必要とされている。
シンガポールはかねて「ノーコロナ」を目指す構えも見せていたことから、「開国」は相当遅れるのではないかとみられていた。しかし、同国での1日当たり新規感染者数は10月初旬に過去最高レベルに達しているが、国民の大多数へのワクチン接種が完了するとの見方から「コロナに罹患しても、重症化リスクは低い」「インフルエンザのように、ある種の風土病のようになる」と位置づけ、パンデミックからエンデミック(endemic)に移行との判断を下した。今回のVTL対象国の拡大は、こうした背景を反映した格好となっている。
マレーシアも、州またぎ旅行が認められたのち、早ければ年内にも(限定的であれ)国境を開けるとの見方も出てきている。特定の国から徐々に行き来を増やしていくに当たって、シンガポールが行うVTLの手法や推移を見守るとひとつの参考となるだろう。
しかし、日本が絡む出入国への対応となると、いささか前提条件が違ってくるように思える。入国者に求められる「待機要請」は依然として10日間、一部の特例を除き外国人の入国は許可されない状況が当分は続きそうだからだ。各国が互恵関係での対応を意識されてしまうと、日本人に対する緩和適応は難しいかもしれない。日本側が規定を緩めない限り、日本からの入国者への条件を厳しいままにしておくような状態が続く懸念があるというわけだ。
欧州連合(EU)各国や米国のように、日本側の入国条件とは無関係に、日本人への条件緩和が認められるとありがたいのだがーー。シンガポールやマレーシアは今後、どういう判断をしてくるだろうか。